サクセッションプランの実装——「あの人が辞めたら止まる」を解く

HR·組織・人事·約8分·全8ページ

エグゼクティブ・サマリー

  • 「あの人が抜けたら業務が止まる」というリスクは、多くの企業で認識されている。しかし対策が経営会議の議題に上がるのは、たいてい当人が退職を申し出た後である
  • サクセッションプラン(後継者計画)が形骸化する最大の原因は、対象ポジションを役職の高い順に選んでいることにある。実際に事業を止めるのは、役員ではなく特定の工場の生産技術者や、基幹システムを一人で保守しているエンジニアであることが多い
  • キーポジションは「組織図上の高さ」ではなく、空席時の事業インパクト×代替の難しさという2軸で定義し直す必要がある
  • 後継者は「指名する」ものではなく「育つ確率を上げる」ものである。Ready Now/1〜2年/3年以上という準備度でパイプラインを可視化し、育成計画と紐づけて初めて計画は運用に乗る
  • 属人化の解消は人事施策だけでは完結しない。その人しか知らない手順・判断基準・顧客関係を、業務データとナレッジとして組織側に移すデータ改革とAXの取り組みが不可欠である
  • Orchestrixは、ビジネス/ソリューション/テクニカル/AIの4アーキテクトを一気通貫で投入し、キーポジションの定義から人材データの整備、暗黙知の形式知化、タレントレビューの運用定着までを支援する

背景・問題提起

サクセッションプランという言葉は、日本企業では長く「社長の後継者を誰にするか」というコーポレートガバナンス上の論点として扱われてきた。指名委員会の設置やCEO後継者計画の開示が求められる中で、経営トップの承継についてはドキュメントが整備されつつある。

しかし、事業を実際に止めるリスクは、そこにはない。

現場で起きているのはこういう事態である。40年勤めたベテランが定年で去った翌月、特定の設備の立ち上げが誰にもできないことが判明する。20年前に自社開発した基幹システムの仕様を理解しているのが一人しかおらず、その人が体調を崩した途端、月次のデータ更新が止まる。長年ある大口顧客を担当していた営業が競合に転職し、後任が引き継いだ途端に取引条件の見直しを迫られる。いずれも、組織図上は決して「重要ポジション」に分類されていない席で起きる。

なぜこうなるのか。原因は3つに整理できる。

第一に、対象ポジションの選定基準が役職序列になっていること。多くの企業で後継者計画の対象は「執行役員以上」「部長級以上」と定義される。この基準は、事業継続リスクの分布とほとんど相関しない。

第二に、リスクの所在がデータとして見えていないこと。誰がどの業務を単独で担っているか、どの手順が文書化されていないか、誰がいつ定年を迎えるかは、人事システム・業務システム・現場の暗黙の了解にバラバラに存在し、突き合わせられていない。人事部は年齢と等級を持っているが、その人が何を握っているかは知らない。

第三に、「後継者を決める」ことがゴールになっていること。計画表の「後継者候補」欄に名前が入った時点で対策済みとみなされるが、その候補者が実際にその職務を遂行できる状態にあるか、そこに至る経験をいつ積ませるかまで設計されていなければ、それは名簿であって計画ではない。

サクセッションプランを機能させるとは、人事制度を作り直すことではない。どの席が止まると事業が止まるのかを事実として把握し、その席に立てる人が育つ確率を、意図的に上げ続ける仕組みを持つということである。以下、その具体的な設計を解説する。

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